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~地下室の手記を読み終えて~

プロローグ風にタイトル付けてみました。


読んでいた本が面白かったので感想文を書きたいと思います。

ドストエフスキーの「地下室の手記」訳 江川卓

でございました。

前回読んだのは、デビュー作の「貧しき人々」
現実の厳しさを感傷的に描いたものです。

今回はそれとは印象の違う作品でした。

地下室の手記で大きな転換期を迎え、この作品無くしてその後の大作群は語れない、と云う様な一品。

謀らずも出版順に読めたのが、ちょっと嬉しいです。

話はと言うと、
生き恥を晒して生活する位なら地下室に籠りたい。と、地下生活をする主人公。
昔の生活と、約20年の地下生活をし考えた事を、
考察しながら文章にしていく、という設定です。

凄く根暗な性質を、主人公にとことんまでやらせる。と言うやり方で書かれたもので、
味覚的に表現すると、スープの灰汁の部分だけを取り出した様なえぐさ。


大抵の人は何処かに共感する部分が有るんじゃないかと思います。

西欧化が進み、ロシアにもキリスト教的な綺麗な人物になることが良しとされた時代、
そんな事言ったって人間には汚ない部分があるんだ。という、人間の本質を突いた内容です。

あとがきに、この本の執筆中に書かれた日記が引用されていました。

「キリストの教えどおり、人間(他人)を自分自身のように愛することは不可能である。
地上の人情の掟がこれをしばり、自我が邪魔をする…
人間はこの地上で、自身の本性に反した理想を追及している。(自他への愛を融合させたキリスト)

そして、この理想追及の掟を守れないとき、
つまり、愛によって自身を人々の為に犠牲に供しえないとき、
人間は苦悩を感じ、この状態を罪と名付ける。
それで人間は絶えず苦悩を感じていなければならず、
その苦悩が、掟の守られた天上の喜び、すなわち犠牲と釣り合うのである。
ここにこそ地上的な均衝がある。でなければ、この地上は無意味になるだろう。」

という日記。

なるほど、それはそうだと納得。

恨み辛み妬み嫉み。
そこから逃れることは出来ないのが人間の性。
苦悩して、犠牲を払って、自分はそれらの罪の対価を払ったのだ。と思わないと心の均衡が取れない、

と、そういう事で、合ってるかな。

主人公は理想を持ってはいるものの、現実はそれとは反対に悲惨なものであり、なかなか理想通りに行かない。
それは生い立ちが深く関係しているのだと、疑わなかったり、自分は他者より優れていると思っている部分があるのです。

無いと生きていけないけど。

そして何より、自分の事を過剰に悲惨だと思い込んで、悲劇的に考えるのですが、そういった部分は、多かれ少なかれ皆持ち合わせているものかな、と思います。

この後の作品が大作として世に出たのは、この悲劇性をそれぞれにまとめて、一個づつストーリーに落とし込んだのかなぁ、と推察、
次に読むものが楽しみです。

この地下室の手記の、初期衝動の様な荒々しさと攻撃的なネガティブ思想感は、若い人が読んだら良いかも知れないなと思いました。

わりと皆そんなもんだからさっ!って思って読んだらいいかも。

理想と自己のギャップは若い時に多くて、何かのせいにしたりもするんだけど、
経験と共に、どんなに責任転換しても、どんなに凹んでも、自分の現実は理想とは違うし、逃げられないと分かって、
自分を無理矢理変えるのも意味がないと分かって、その内心の傷が小さくなって、
まぁ、色々あるけれども、
それを人は成長と呼ぶのでしょう。

今の私にぴったりの一冊でした。


最近はダウンロードで知らない音楽を聞いてます。

染井さんに謎のインディーエレクトロブームが到来。
この曲にハマってお得意のエンドレスループしております。

Hold Me

Hold Me

  • Gold Fields
  • エレクトロニック
  • ¥200


このバンド、YouTubeで映像見ると残念な気持ちになるので、是非音源だけお楽しみ下さい!爆

それでは、皆さまシーユーnext